コラム2025.07.17

電子カルテのメリット・デメリットとは?紙カルテとの違いも解説

昨今、多くの医療現場では業務のデジタル化を目的とした「電子カルテ」の導入が進んでおり、多くの医療機関で患者様の医療情報が電子データとして保存・管理されています。

電子カルテを導入することで、ヒューマンエラーの削減やデータの一元管理が可能となり、大幅な業務負担の軽減が期待できます。

今回は電子カルテの導入を検討されている医療従事者の方に向けて、紙カルテとの違いや導入メリット、導入時の課題を解説します。

目次

•電子カルテとは?
•電子カルテのメリット
•電子カルテを導入する際の課題
•電子カルテの種類
•まとめ

電子カルテとは?

電子カルテは医療情報をデジタル化して管理するシステムを指し、患者様の診療情報や職員間で共有可能な情報を電子データとして保存・管理できるという特長があります。
 
具体的には以下のようなデータです。

•患者様の基本情報:問診内容、既往歴、感染症、薬歴・食物アレルギーの履歴等
•診察結果:病名、検査内容、次回診察予定等
•処方内容:治療方法、処方箋、通院歴等
•画像データ:レントゲン、MRI等
•文書データ:診断書作成テンプレート、紹介状テンプレート等
•職員間共有情報:院内外連絡機能、掲示板機能、患者情報メモ等
など
 
こういった医療情報を電子カルテ内に格納することで、アクセス権限を持つ医療従事者であれば必要な情報をいつでも参照できるようになります。
 

医療業界における電子カルテの普及率

医療業界において、電子カルテは徐々に普及してきています。
 
厚生労働省の「電子カルテシステム等の普及状況の推移」を参照すると、平成23年には一般病院では約21.9%だった電子カルテ普及率が、令和5年には約65.6%に、一般診療所では約21.2%から55.0%まで大幅に上昇しました。特に、地域医療を支える200床未満の一般病院においては59.0%と、近年大きく普及が進んでいます。
 
このように電子カルテが大きく普及した背景としては、令和4年5月に自由民主党政務調査会から発表された「医療DX令和ビジョン2030」の影響が挙げられます。この提言は、令和22年に向けた医療提供体制の総合的な改革を目指し、医療DXの制度的対応、電子処方箋の現況と今後の対応、病院情報システムの刷新などを包括的に取り扱っています。こうした流れを受けて、電子カルテの導入は今後さらに加速すると見込まれています。

電子カルテのメリット

紙カルテと比較して、電子カルテには以下のようなメリットがあります。

リアルタイムで情報の管理・共有が可能

電子カルテの最大の特長は、情報の即時性にあります。データを迅速に閲覧・検索できるため、院内での医療情報共有がスムーズになります。さらに、地域包括ケアシステムの構築にも寄与し、地域の医療機関や介護施設との連携を促進します。

業務効率化につながる

テンプレートや選択式の入力方式を活用することで入力速度が向上し、記録漏れも防げます。また、検索機能や診療履歴の表示機能を使うことで、属人性を排除した管理が実現します。

ヒューマンエラーの削減

電子カルテには点検チェック機能があり、誤入力や読み間違いを防止できます。特に投薬ミスを防ぐ仕様が組み込まれているため、医療サービスの質や患者の満足度向上に寄与します。

電子カルテを導入する際の課題

導入・運用費用の発生

電子カルテを導入する際には、システム費用や初期設定、関連機器の購入費用が発生します。また、クラウド型の場合は毎月の運用費用、オンプレミス型ではメンテナンス費用も必要です。

運用体制の構築

紙カルテから電子カルテへの切り替えに伴い、業務フローや運用マニュアルの再構築が求められます。導入前の職員研修も必要です。
 

停電・セキュリティ対策

電子カルテは電子機器で構成されているため、停電時や電力供給が安定しない状況下では使用できません。
 
そのため電子カルテを導入する場合は、万が一の事態に備えて一時的に紙カルテの運用に切り替える方法も用意しておくなど、対応方法を検討しておく必要があります。

さらに電子カルテには患者に関する多くの個人情報が含まれているため、セキュリティ対策も必要です。後述するクラウド型のようにネットワークを介して利用する場合には、データを解析される危険性もあるため、導入の際には留意しなければなりません。

電子カルテの種類

電子カルテは「クラウド型」「オンプレミス型」「ハイブリッド型」の3種類に分けられます。特長は下図のとおりです。
 
 クラウドオンプレミスハイブリッド
費用
初期費用が安価
毎月運用費が発生
初期費用が高額
メンテナンス・更新費が発生
初期費用が高額
毎月運用費が発生
メンテナンス・更新費が発生
端末スペックを満たせば選択可能指定されることが多いスペックを満たせば選択可能
利用場所制限なし院内に限定設定により外部・院内で使用可能
ネット環境インターネットを利用院内独自ネット環境インターネットと
院内独自ネット環境の
切り替え可能
サーバーベンダーが管理院内に設置・管理ベンダー管理サーバーと
院内サーバーを併用
セキュリティファイアウォールなど
サイバー攻撃対策必要
院内運用のため
サイバー攻撃等に強い
ファイアウォールなど
サイバー攻撃対策必要
カスタマイズ自由度は低い
ベンダーにより
制約かかる場合多い
自由度は高い
規模や要件に合わせ
カスタマイズ可能
自由度は高い
規模や要件に合わせ
カスタマイズ可能
バックアップクラウドに保存
自然災害や停電対策可能
ネットトラブル時でも
オフライン保存閲覧可能
クラウド/自院内サーバー
両方に保存

電子カルテの保存義務

要配慮個人情報である電子カルテは、厚生労働省により保存義務が定められています。保存期間は「一連の診療が完結した日から5年間」とされており、治療が継続している場合はこの期間に含まれません。
診療・治療の完結日から起算され、長期間の治療でも過去の医療記録を消してはならないことが義務付けられています。
 
また、レントゲン写真や処方箋のような個人情報は2年間の保存期間を定められています。

電子保存の三原則とは?

電子カルテは、従来手書きで行っていた診療記録をデジタルデバイスに記録・保存するシステムです。そのため医療現場での電子データの取り扱いには細心の注意を払わなければなりません。
 
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版」を参照すると、医療情報を電子データとして取り扱う場合には「真正性」「見読性」「保存性」の3点を遵守する必要があるとされています。
 
真正性真正性とは、電子データが改ざんされていないことの証明。データがその生まれたときの状態を保持し、変更や改ざんがないことを確認でき、当該電磁的記録の作成に係る責任の所在を明らかにしなければならない。
通常、タイムスタンプやデジタル署名などの技術を用いることで確保される。
見読性保存されたデータがいつでも必要な際にアクセスでき、情報の内容を必要に応じて直ちに書面に表示できること。
データ形式が時代と共に変わることもあるため、古い形式のデータも適切に変換や移行を行い、常にアクセス可能な状態を保つ必要がある。
保存性保存すべき期間中において復元可能な状態で 保存することができる措置を講じていること。
ハードウェアの故障やデータ破損、災害などからデータを保護する手段を確保することが必要。
これには、保存期間の設定とそれに従ったデータの保管・廃棄も含まれる。
 

まとめ

医療情報を電子データとして保存・管理し、共有を可能にする電子カルテは、業務効率の向上や医療の質の向上を目的に、多くの医療機関で導入が進んでいます。
 
電子カルテの導入により、ヒューマンエラーの削減やデータの一元管理が実現し、業務負担の大幅な軽減が期待されます。一方、導入費用の負担、停電対策、セキュリティ管理の強化といった課題への対応も不可欠です。
 
電子カルテの取扱いにあたっては、「真正性」「見読性」「保存性」の3点を遵守することや、一定期間の保存義務などが厚生労働省により定められています。
 
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※本記事の記載内容は2025年5月現在のものとなります。
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